ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 499 2026-01-08

令和7年 医師会病院の運営実態調査

野村 真美

 

ポイント
◆ 医師会共同利用施設としての医師会病院の今後のあり方を検討するための基礎資料を
作成することを目的に、アンケート調査を実施した。全国65 施設の医師会病院を対象とし、
経営状況を含む運営実態を把握するとともに、医師会病院の特徴および課題を整理したも
のである。その結果、39 施設から回答(回収率60.0%)が得られ、すべて有効回答であっ
た。


1.医師会病院の特徴
◆医師会病院は、1960 年代から2000 年代にかけて開設された施設が全体の約9 割を

占め、地域に根ざした中規模病院として発展してきた。運営形態では、医師会自身
が開設・運営する病院が82.1%と大半を占め、専任病院長が約9 割に上るなど、比
較的安定したガバナンス体制が確立している。
◆病床規模は100~199 床が最も多く(56.4%)、ほとんどの施設が一般病床を有する
ほか、療養病床や回復期リハビリテーション病棟を併設する病院も一定数存在する。
これにより、急性期から回復期まで一貫した医療提供が可能な体制が整備されてい
る。
◆機能面では、開放型病院(74.4%)、地域医療支援病院(61.5%)の割合が高く、地
域医療機関との連携拠点としての役割が強い。また、救急輪番制参加病院(59.0%)
や災害拠点病院(23.1%)として、救急・災害医療の受け皿となる病院も多く、地
域医療体制の中核を担っている。
◆健診事業を実施する病院が74.4%と多く、地域住民の健康管理・予防医療にも積極的
に取り組んでいる。令和6 年度の病床数適正化支援事業では、10 施設(25.6%)が手
上げし、285 床の申請が行われるなど、地域の医療需要に応じた病床再編にも主体的
に取り組んでいる点も特徴である。

◆在宅医療・介護分野では、訪問診療(43.6%)、往診(35.9%)、在宅看取り(28.2%)
などの在宅医療サービスを提供し、併設事業として訪問看護ステーション(59.0%)
や居宅介護支援事業(43.6%)を有する病院も多い。これらの取り組みにより、地域
包括ケアシステムにおいて医療と介護をつなぐ重要な役割を果たしている。


2.医師会病院の経営状況と課題
◆医師会病院の経営状況をみると、医業収益の増加や費用増加の抑制により、医業活動
そのものは一定の改善がみられた。しかし、補助金総額が令和5 年度から63.7%減少
し、特にコロナ関連補助金の急減が経常利益を大きく押し下げた結果、経常利益率は
悪化した。医業利益率・経常利益率ともに全国平均を大きく下回り、赤字割合も全国
より10 ポイント以上高いなど、医師会病院は全国の病院と比較しても厳しい収益構
造に置かれている。
◆ 自由記述の分析からは、地域医療・介護との連携不足、救急医療の負担集中、医師会
員との連携の地域差など、地域連携に関する課題が明らかとなった。また、医師・看
護師を中心とした慢性的な人材不足、多職種の採用難、人材紹介会社への依存、賃金
競争力の低下など、人材確保に関わる構造的問題も深刻化している。加えて、建物・
設備の老朽化、物価高騰と診療報酬の乖離、病床利用率の低迷、資金調達の困難など、
経営基盤の脆弱性も顕在化している。
◆これらの課題は相互に関連しており、個々の病院の努力のみでの解決は困難である。
医師会病院が地域医療を持続的に担うためには、財政的支援の拡充、計画的な設備更
新と中長期的な資金調達戦略の構築、活用しやすい補助金制度の整備が不可欠である。
あわせて、病院機能の見直しや収益構造の転換、地域・広域での医療機関・行政との
連携強化が求められる。これらを推進するためには、医師会員や地元行政を含む関係
者に対し、医師会病院の存在意義と役割への理解を深める働きかけが重要となる。

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