ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 498 2026-01-07

医師不足・偏在の解消に向けたシニア世代医師のキャリア支援
-ケーススタディから探る可能性と課題-

清水 麻生坂口 一樹羽藤 倫子

 

ポイント

◆医師不足・偏在対策の一つとして、定年退職後のシニア世代医師の就業継続が期待されている。既往調査では医師の多くが65歳以降も就業継続する可能性が高いことが判明しており、セカンドキャリア支援の充実は急務である。
◆本稿では、望ましい支援の在り方を検討することを目的として、シニア世代医師向けのキャリア支援を実施している3組織(医師会、民間病院、公立病院)の取り組みを対象としたケーススタディを行った。インタビューから得た知見を基に考察を加え、他地域にも応用できる可能性や課題を整理した。
◆【事例1】愛媛県医師会では、医師不足・偏在という行政の課題と定年退職後の就業支援を希望する地元の大学OB/OGのニーズをきっかけに、医師会・行政・大学が連携したシニア世代向けのドクターバンクが運営されている。
◆【事例2】社会医療法人財団 菫仙会 恵寿総合病院では、地域の過疎化や人口減少への危機感から、いち早く健康経営やICTの活用に取り組み、シニア世代を含めた全世代が就業継続しやすい環境を整備している。
◆【事例3】岩手県立久慈病院では、震災の医療支援で来県した医師らの定着支援を機に定年後の医師の雇用継続に関する人事制度を創設し、その後さまざまな課題に直面しながらも、医師確保のための取り組みを継続している。
◆有効な支援体制の構築に向けて次の4点を指摘した。第一に、地域医療の中核を担う組織や地元企業等の主要な関係者が連携し、地域一体となった支援体制を構築することが望まれる。第二に、広報や専任スタッフの配置といった体制充実には、地域医療介護総合確保基金等の既存制度の活用が効果的である。第三に、医療機関がシニア医師を雇用する際は、①同一労働同一賃金、②柔軟な人事異動、③健康経営の実践、の3点を意識した人事制度の設計が望ましい。最後に、今後推進すべき施策としては、①医師の二拠点生活の推進、②シニア世代の生産性を向上させるICT化・デジタル化、③シニア世代医師を対象とした体系的なリスキリング制度の整備の3点が挙げられる。

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