ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 259 2012-04-18

国家財政(2010年度決算と2012年度予算)のポイント
−消費税と特別会計を中心に−

 

「社会保障・税一体改革大綱」が閣議決定されたことを受けて、足下の国家財政のポイントを整理した。

 

  • 消費税収(国分)は、現在の一般会計予算総則で高齢者3経費に充てることになっており、これを福祉目的化という。2012年度予算では、消費税収7.3兆円、高齢者3経費17.6兆円(年金差額分加算後)で不足分が10.2兆円(四捨五入差がある)である。国は、消費税収の使途を高齢者3経費に少子化対策を加えた社会保障4経費にする方向であるが、仮に現在消費税率が10%になっても、消費税収(国分)は16.5兆円であり、現在の高齢者3経費にも不足する。
  • 消費税が厳格に目的税化されれば、社会保障費の国庫負担増が必要になった場合には、必ず消費税率を引き上げることになる。消費税を支払う時に個人の消費税を軽減、免除することは困難であるため、国民はすべて、いったん同じ消費税率による支払いをしなければならない。低所得者にとっては非常に負担が重いので、消費税率が上がるぐらいなら、社会保障費の国庫負担縮減、社会保障の給付範囲の縮小も止むを得ないという選択を強いることになりかねない。
  • 国は、消費税率引き上げに対する国民の理解を得るために、特別会計改革を急いでいるとされており、2012年1月に、特別会計数を17から11に縮減する方針を示した。しかし、過去の例からも、単に会計数を縮減するだけで、歳出削減が進むわけではない。
  • 特別会計の積立金は、近年、財政投融資特別会計などを中心に取り崩しが進んできた。一方で、剰余金(歳入歳出差引がプラス)が出て積立金を積み増している会計もあるので、特別会計全体の積立金は、取り崩し額に比例して縮小しているわけではない。
  • 剰余金は、予算策定時にはあまり見込まれていない。したがって、予算上はどの会計も積立金をそれほど積み立てる計画にはなっていない。しかし、決算では、予算をはるかに上回る剰余金が出る。剰余金のほとんどは当該会計内で翌年度に繰り越される。この時点では、その翌年度予算はすでに策定済みであるので、決算剰余金は当該会計にとっては純増と言ってもよく、決算剰余金が既得権益化していることを否定できない。
  • 特別会計については、「埋蔵金」への注目が薄れてきたが、決算を重視し、そのスピードアップを図ること、中間決算を実施することなどを通じて、引き続きスリム化を図ることが必要である。

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