ワーキングペーパー

ワーキングペーパーNo. 270 2012-11-13

医師の偏在解消を検討するためのデータ整備に関する提言
−「医師・歯科医師・薬剤師調査」を中心に−

 

  • 厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師調査」について、利用者の視点から以下の提案をしたい。
    • 人口当たり医師数、面積当たり医師数を市区町村別に示すこと。
    • 診療科別医師数については、最低限、病院、診療所別に分けて示すこと。
    • 診療科別医師数についても人口当たり医師数等を示すこと。小児科は小児人口、産婦人科は出産年齢人口、また診療科によっては高齢者人口も考慮すること。
    • さらに診療科別医師数について、主たる診療科と複数回答で選択した診療科の地域別クロス集計表を示すこと。
    • 専門医については、臨床経験などを把握できる項目を追加すること。
    • 大学医局等か関連医療機関などへ非常勤で派遣されている場合には、主たる派遣先と日数や時間等を調査すること。
  • ただし、調査を精緻化してもなお、政策提言に資する分析は難しい。医師偏在の抜本的な解消策や地域医療計画は、地域の実情を熟知する地域主体でこそ作成できる。そしてそのためにも、地域で使い勝手のよいデータを提供することが必要である。ここで提案したものは一例であり、地域の要請を踏まえてさらに改良していただければと思う。
  • このとき注意しなければならないのは、提示すべきはあくまで基礎データであるということである。厚生労働省は先ごろ、医療費適正化基本方針の改正案を示したが、その中では、都道府県は平均在院日数の目標値を設定することとされており、厚生労働省は希望する都道府県に平均在院日数の推計ツールを提供する方針である。これも都道府県に対する支援のひとつかと思われるが、今回のデータを見ただけでも地域の実情はさまざまである。画一的なツールの提示が、地域の独自性をそこなわないよう注意が必要である。
  • 厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」は医師数を把握するための基礎データとしてもっとも有効である。医師偏在のように喫緊の課題もあるで、厚生労働省には利便性向上にむけての積極的な取り組みを要望したい。

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